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私の”いいはなシーサー”(No.23)
十一月になり朝晩めっきり冷え込んで、少しだけ冬の匂いが感じられるようになりましたね。体調は大丈夫ですか? 田舎にいたときは、この時分になると、ストーブの配管を確認し、表のドラム缶の灯油を点検して、という作業が必要になり、それ以前に朝の吐く息が白くなり、空気が澄み渡る。冬の匂いがしてくる。静岡でも、特に私の住んでいる辺りではこの季節、時折海の匂いが渡ってくる時、夏の海のモワっとした淡いにおいとは違いきつい冷たい潮の匂いがしてくるようになる。私なりの季節感なのですが、感じたことありますか? 自分なりの季節感、皆さんはいくつ持ってるでしょう? 自然界ではすでに壊れ始めた四季を少しでも感じていたいな、と最近つくづく思うのです。

テレビの番組で「いいはなシーサー」というのが気に入っています。心がほっこりするエピソード、感動物だったり感涙物だったり。単純な私は一回は泣きますね。今日は私の「いいはなシーサー」を紹介しましょう。

去年、親父が他界しました。不器用で真面目で無口で、典型的な農家の長男です。私が田舎を出る時も、自衛隊であちこち転勤しても、辞めて料理の道に進んでも、やれるだけ、後悔しないようにやれ、と言うだけ。長男の私に帰って来いとは一度も言わなかった。「いつか楽さしてやるからな」、と言う思いはあるものの、静岡の土地で結婚し、田舎では弟夫婦が両親と暮らしを築いている、という状況で時間の経過と共に、田舎に帰る選択肢はなくなっていた。そして親父は旅立った。田舎を出てから、特に料理界に入ってからは数えるほどしか帰らなかった私が、いつも親父に聞きそびれていたことがあった。
「帰ってきたほうが良かったのかな? 帰って来て欲しかったのかな? 」
今年一周忌で帰った折に、母が形見分けにお前にとって置いたよ、と差し出してくれたのは腕時計だった。最後まで付けていたそうだ。
愕然とした。衝撃だった。その時計は・・
まさかと思い腕につけてみる。やはりそうだ。その時計は中学の入学祝に親父が私に買ってくれたものだった。田舎を出る時置いていったものだった。それを最後まで付けていたのか。愚問だったな、親の愛情をいっぱい貰っていたんだな、と今更ながら思い知らされる。 帰って来て欲しくない親なんかいないよな・・もうその時を取り戻す事は出来ないけれど、気がつけばよかった、親父の時計に・・。
今、三十年ぶりに帰ってきた腕時計は、正確に時は刻まないけれど私の腕にある。 
ずっと離れていた分、これからの自分と一緒にいてもらおうと思っている。
腕に付けていると不思議と心が落ち着く「親父と私の時計」の話しでした。 

2007年11月吉日 シェフ
 
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