当時はフランス料理界の大転換期でした。
ヌーベルキュイジーヌ(新フランス料理)の波が押し寄せ、ビストロブーム、オーベルジュ(宿泊型レストラン)と、次々と新しい波が押し寄せ、次代を担うシェフたちの本が次々と出版されました。
クイーンアリスの石鍋さん、シェ・イノの井上さん、オーミラドーの勝又さん、などなど。いつかはきっと自分も・・と思いながら、七間町の吉見書店で立ち読みの日々でした。
そして、先輩のスーさん(とっても優しい兄貴みたいな杉山さん)と、あーでもない、こーでもない、このフランス語なんだっけ? などと話はつきません。スーさんはいつも冷静で、和食の知識もあるので、随分と参考になるのです。
まじめな人だなぁー。人種が違うのかなー。でも、いい人だから、うまくやらなきゃーと初めは思っていました。
ある暇な休み前の夜でした。薩川シェフも早めに帰り、本を読んでいると、いつの間にかスーさんがいません。
あれっ片付け始めたのかなぁ〜。まずいぃ〜。先輩に先に動かれると若い衆の立場がないんです。掃除用具を持って来ようとした瞬間、重い扉の隙間からスーさんの声。
それも押し殺したような変な声・・「ほら・ほら・おいー」 なんだろうと覗いて見ると、目の前にある水槽のオマール海老に何か言っているのです。「おーいハナ!食えっ、ほら・ほら」
そう言いながら、竹串に糸を繋いで、餌は平目でオマール釣りをしているのです。それも、オマールに私のあだ名をつけて・・でも、その横顔・・本当にいい人なのです。草薙ツヨシ君を太らした感じというのでしょうか。この瞬間、スーさんは兄貴だと思ってしまいました(笑)。
一人暮らしで、田舎も違い、友達と呼べる人もないその頃、安心して相談できる人を見つけた思いでした。
次回は桜祭り事件です。
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