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物語 その21 「ノエル(クリスマス) その2」

ノエル(クリスマス)も無事に過ぎ、仕事も落ち着いてきた頃、いつもより少し早く出勤すると、ドアのガラス越しにヒデが何かしているのが見えた。何してるの・・? ほんの数秒ドアを開けずに見ていた。テーピングだった。普段からそれは、全部の指にバレーボールの選手のように巻いていた。いつだったか何故?と聞いた事があったのだが、そんなに顔色を変えずに「ちょっと手が荒れるんで、・・この方が仕事しやすいんで・・カッコいいしょ・・」 そう言って笑っていた。
「おはよう!」 ドアを開けた。返事がない。いつもと違う。
「仕事の前に少し相談があるのですが・・・」
そう言ってヒデが語り始めた。
近年、親父さんが亡くなった事。家業を継ごうか悩んだ事。料理が大好きな事。それと反比例して手の荒れが酷くなっていく事。病院で薬をもらい、毎日就寝時、薬を塗って手袋をして寝る事。朝、また薬を塗ってテーピングをするのに45分掛かる事。家業をこのままにしてはいけないと思っていること。この店がいい店になったと納得したら区切りをつけようと思っていた事・・・・
  「・・料理やめます・・。」
返す言葉が無かった。テーピング途中のその手は、ボロボロという言葉が綺麗に聞こえるほどの状態で、どんなに料理が好きかヒデの思いが伝わってくる。もし、自分だったら、ここまで出来るだろうか?区切りをつけようと思って必死だったんだね。もう、誰にも止める事は出来ない。
  ・・・ヒデが去って四ヶ月後、この店が人手に渡るという事が噂になっていた。業績が少しずつ右肩上がりになって来たものの、経営サイドから見ると物足りなかったらしい。あっけないものだった。今月で閉店します・・最後まで告知の貼り紙は出来なかった。ヒデにも連絡しようと思ったのだが、ヒデの大好きな店が無くなるとは言えない。。。明日から営業しないで後始末か・・と思いながら最後の生ごみを出しに行くと、そこにヒデが立っていた。
  「チーフ、明日何時に来ればいいですか?」
  「ヒデ、ビール飲むか?」
何の説明も言葉も必要なかった。その日のビールの味は思い出せない。
  ヒデ、かずぴん、リリチャン、おゆき、トンちゃん・・・・みんなみんなありがとう
ただただ、出会った人達にありがとう。
短い間でしたが、大きな大きな宝物をいただきました。・・さて自分どうするか・・どこで働くかなーっと・・

 
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