その51 営業年数を重ねると・・・

営業の年数を重ねるにつれいい事も一杯貰えたけれど、心を削る事もしばしば。

開店2年目に結婚披露宴をお受けしたお客様が、1年後 赤ちゃんを抱いてきてくれた時は感動しました。少しでも人の力になれた事がこんなに嬉しいとは思いませんでした。
7年目位には中学生時代、親に連れられてよく来てましたよ、という若い青年が両親と来店し、初給料でご馳走しに来ました、という報告を持って来ました。

そして9年が過ぎた頃には 明日から入院するので、今日は来たんだよ。という常連のKさん。
「どうしたんですか?」
「うちの人ガンなんですよ。明日入院だからどうしてもってね。」

 いつものオーダーより少なめの皿でしたが美味しそうに食べて頂き、コーヒーとデザートも終わりそうな頃、奥様がレジに立ち「ご馳走様、お会計お願い」と雑談を交わしながらの、いつもの様子。隣りで立っていた私は、旦那さんの方にさり気なく目を運ぶと、残り僅かのコーヒーをゆっくりと飲み干し、店内をひとつひとつ確認するかの様に見渡しながら
   「あぁ  いい店だったなぁ~」
独り言をポツリ
そしてゆっくりと立ち上がりました。
「退院したらまたくるね」
「はい、お待してますよ」
といつものように送り出しながら何か心の中にどんより黒い雲が広がっていくのでした。
それから半年後、Kさんの訃報を見つけてしまうのです。

人の人生の節々に少なからず寄り添うことは、楽しみを分けて頂くかわりに悲しみも大きな物ですね。

この頃、郊外にぶどうの丘や焼き肉のチェーン店が相次いでオープン。第二次食べ放題ブームの様相を呈し、個人店は鷹匠地区などの街近が人気エリアになって行くのでした。