メガピクス

静岡レストラン物語History

その14 旅立ち

大変な思い、貴重な体験を重ねた六月のある日。シェフから「話があるので後で来るように」と言われました。イベントの打ち合わせかなあ。何か失敗したかなあ。・・と思いながらシェフの前へ

「ハナ(=シェフ船水の愛称)は、将来料理人でいたいのか、店を出したいのかどっちだ?」

突然でした。びっくりです。
それは、将来店は出したい。だけど、今はそんな事を考えていられる立場ではない。目の前の料理に没頭すべき・・と自分で思い込んでいたので、答えられずにいました。答えを要求しているわけではないらしく、淡々とシェフは続けます。
「来月で上がれ(=店を止めること)。次の店は決めてある。色んな店で色んな事を勉強しておきなさい。次の店は駅南でがんばっているJだ。オーナーシェフも堅実な人で経営の勉強にもなると思うよ。頑張ってみろ。」

びっくりですよね。店をやめなさい。あの店で働きなさい・・退職と就職が瞬時に決まった訳ですから・・この業界では、よくある事で、多少強引に映るかもしれませんが、シェフに認められ、晴れて旅立つ事のご褒美なんです。後日分かった事ですが、若い衆を上げるという話を流しておいて、反応のあった店をピックアップし、給料、待遇とか段取りまでシェフ自身が奔走し手配いただいたみたいです。

そう言えば一度だけ40度をこえる熱を出し、店を休んだことがありました。それまで、私が何処に住んでいるのか解らないはずなのに、富田マネージャーとシェフが、営業がおわってから訪ねて来てくれた事がありました。一人住まいで、食事がとれているか心配してくれて、わざわざ、お粥つきのお弁当を作ってくれたのでした。普段はすごく厳しいけれど考えてくれているんだ。感激でした。シノアでの色んな事が頭をよぎります。  

「〇月〇日の八時半に行くといってあるからな。」

現実に引き戻されます。それまで、会って話しもした事もない人のところへに、いきなり行ってうまくやれるかな? すこし不安。

よーし、がんばるぞう。ここからだ。これからだ・・・

新しい旅立ちに心を奮い立たせる、わたしでした。

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