メガピクス

静岡レストラン物語History

その16 革ジャンとシェフ(1)

新しく移った駅南のJ店には、ストーブ前に若いトシくんがいて、いろんな意味でいい刺激になりました。彼はココに来る前にマリーシャンタール(懐かしいですね)にも居たことがあるので飲食業界3年ぐらいでしょうか。とっても器用でストーブの作業だけ見ていると10年選手のようです。たのもしい相棒でした。
ある日、焼津のえびすさんへ行った時とっても寒かったので革ジャン欲しいなあなんていう話しになったのですが、よせばいいのに前に薩川シェフに頂いた年季の入った革ジャンを思い出し、つい
「しぶい革ジャンがあるけど着る?」
言ってしまったんです。悪い癖です。なんかしてあげたくて言ったのですが、あげられる様になっているのか確認もしていないのに・・
「だいぶ古いよ。大丈夫?」
オーケーさ。大丈夫、中古でしょ・・ということであげることになったのです。
さっそくアパートに帰って、カバー付きハンガーにかけてあった革ジャンを確認。着古してあるものの肘の所のシワのよれ具合とか、所々白くすれた感じとか相変わらず渋い。すぐにでもキャロルができそう。喜んでくれるに違いない・・ウキウキして持っていったのでした。それから、宴会シーズン突入やらクリスマスやら忙しい日々が続き、革ジャンがどうなったか頭から消えてしまいました。そして、新しい年になったある日オーナーから相談があるからということで近所の居酒屋さんへいったのです。
「ハナちゃん、頭でやってみる気ある?」
いきなり過ぎてビールが鼻から出そうになりました。
「小さい店なんだけど、こういう話、今時チャンスだと思うんだけど・・」
私だってチャンスだと思ってます。だけど、気管支と鼻に入ったビールが痛いわ,シェフという字がチラツクはで大、大、大パニックです。涙まで出て来てしまう。
「ハナちゃんにとっていい話だから言ってるんだよ。辞めて欲しいとかでこういう話しをしている訳じゃないから・・」
涙をどうやら勘違いしているようです。大丈夫です。この店のみんな大好きだし、感謝しています。誤解してませんよ。
「少しだけ時間を下さい。なにしろいきなりだし、その現在あるお店も見て置きたいし」
その後なにを話したかはまったく覚えてはいません。色んな人が引き抜きやスカウトされた話しを聞いてはいましたが、まさか自分がそういう立場にいることが認識できていませんでした。色んな事が一度に頭をよぎります。休みの度に、無給でよその店を手伝い、仕事を覚えた事。色んな失敗した事。祖母が亡くなった時の事とか・・・
ちょっと速い気もしますがシェフですか・・

航空自衛隊を辞めて8年目の春でした。

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