メガピクス

静岡レストラン物語History

その18 チーフと料理長とヒデ

いざ、任されたお店、私の初シェフとしての仕事の場 ゛レストランはんどるや゛ に勇んで初出勤です。出迎えてくれたのは、スカウトしに来てくれた人と一緒にいたヒデ、運命的な出会いでした。店内を隅々まで案内してくれて、なんでも直ぐ回答してくれて、小柄な体に目がクリッとしていて、人当たりもよく、誰にでも好かれるだろうなぁ、という印象。
゛これからよろしく゛ ということで軽く自己紹介。早速今までの売り上げグラフや原価率などをチェック。数値目標との差を計算する。それからその目標が正しいか計算。ざっと原価率を十パーセント削減、売り上げを十パーセント上げるのが目標となった。ヒデと目が合う。少女漫画の瞳のように星が何個も輝いている気がした。
私が「六ヶ月でクリアしようぜ。」と言うと間髪を入れずに「やるしかないですよ。」とヒデ、「きついけど、がんばって人より稼いで、人より遊ぼう。」
乾杯!初日は缶ビールを買ってきて掃除と打ち合わせ、後二日でメニューと仕込みを済ませてしまわなければ・・
大事な初日を飲んで終わってしまったので大慌て、今日と明日しかない。まったくしょうがない人達ですよ。二日目の朝、今日は早くから行って仕事しようと約束より一時間早く店に出勤。でも、とっくにヒデは仕事をしていた。それも私が仕事しやすいように考えて、使うであろう野菜は全て揃えました・・という具合。まだ、シェフになりたての私は偉そうにしている訳でも、そうしろといった訳でもないのに・・
「おはようございます。チーフと仕事の内容が違うかも知れませんが、用意しました。コーヒー入ってますので打ち合わせお願いします。」
感動です。彼とならやれるかも知れない。1+1が少なくとも4ぐらいになるぞ。そんな気がしました。レシピ帳やフランス語の辞書や辞典をしまいたくて、コーヒー片手にディチャップ台(料理出しテーブル)の後ろの引き出しを開けました。中から新品のような名刺。もう作ってくれたのかと思い、見ると料理長のところにはヒデの名前がある。電流が走りました。それも強烈な電流が・・。
「ヒデ、自分がトップなのに何でオレを入れたの?。若い子入れればいいじゃん。」
「この店をどうしても成功させたくて・・。料理大好きだし。」
なんていい奴なんだ。普通なら料理長降りてまで店を良くするなんて言えない。それなのにヒデは自分を迎えてチーフと呼んでいる。彼の真っ直ぐさと情熱に胸が熱くなってきます。がんばろーな! 必ず成功させような!
変えられるところは変え、必死でがむしゃらに走り始めた二人でした。昭和63年頃でした。その頃は、昭和町イタリアンのカロッタロッサ、フレンチのシェシノア、アラスカ、オートロアシェフ、ムッシュ、伊勢丹裏のプロバンス、人宿町シェオクスなどなど、静岡中心街で活躍しておりました。

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